「私の血では満足できませんか」
驚きの言葉にイオンが何も言えずにいると、
「私の血は美味しくないとかそういうことですか、昨日はお腹減りすぎて仕方なく飲んじゃった感じですか」
「いや、撫子、落ち着け」
ぐいぐいと迫られイオンが戸惑う。
やはりパリで聞いた噂は嘘だ。日本人女性は強い。
「ではどうだったんですか?!」
答えなければ質問し続けるような撫子の勢いに負け、イオンは正直に話すことにした。
「君は、乙女だろう?」
撫子がその言葉にまた子供扱いされたのかとムッとする。
「違う。男性経験が無い、という意味だ」
バッと撫子の顔が赤くなった。
わなわなと震えているが、穢れ無き乙女かなど血を飲めばすぐわかる。
だが今回はそれだけではない。
撫子の血の味は、イオンにとって味わったことの無い甘美なものだった。



