麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


イオンはポケットから懐中時計を出し時間を確認する。
既に電車の時間は確認済み、少し先の町に行けば低価格のホテルが何軒かあることもバイトをしたオーナーの妻から教えて貰っていた。
そろそろこの家を出なくてはならない。
未だにまだ昨夜の甘い血の味を欲している状態では長居は無用だ。
彼女を傷つけたくない、それを強く思っていることがイオンの理性を保っていた。


「そろそろお暇しよう。
撫子には助けて貰ったのに本能に負け了承も得ずに吸血してしまったこと、本当に申し訳なかった。
だが君の優しさに救われた、感謝する」


立ち上がろうとしたイオンの腕を咄嗟に撫子が掴む。
イオンも驚いているが撫子も自分の行動に驚いていた。


「どうした?」

「日本で吸血相手と婚約相手を探すんですか?」


真っ直ぐに見ながら撫子が問いかけると、


「バイトをして感じたが、日本人女性は俺からニンニクの香りがすることは気にせずルックスの方が魅力的に思えるらしい。
血を頂くのは何とかなりそうだがさすがにこの地で婚約者は無理だろう。何せ行くのは海の遙か向こうの国だ」


そっと自分の腕を掴む撫子を離し立ち上がると撫子も立ち上がった。