麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


「国に帰る方法は無いんですか?例えば三年経てば帰れるとか」

「いや時間の決まりは無い。あるのは条件だけだ」

「条件?」

「消された記憶を蘇らせた女性を婚約者として連れ帰ること。
ようはワイズミュラー家嫡男である俺が国王から当主として認められる条件を揃えてこいと言うことだ」

「待って。結婚相手はわかるとして、消された記憶を蘇らせるってなに?」


撫子にはイオンが父親を殺害した時の記憶が消されていることがあまりに不自然に感じた。
何かそこは訳がありそうだ、それで父親を殺害した罪が消えるような理由が。
だからこそ家を継げる条件が全て揃うのでは無いだろうか。
撫子がそう指摘すると、イオンは笑う。


「俺もそう思っている。
そもそもワイズミュラー家は王族の一つで国王にも信頼が厚かった。
だが他の貴族からは敵視されていて、今回の王のやり方はその不満を逸らすためのものだと考えている」

「だから王様は死刑にせずに国外追放にしたと」

「俺はあの方を心から信頼している。
だからそれに応えたいが、ニンニクの臭いのする男を女性は嫌がるからな。
吸血するのも厳しい上に婚約者など見つかるのか」


今までそう思って欧州を渡り歩いたが収穫も無く、収穫どころか吸血も出来ないために押しに弱いという噂に縋って日本にまで来てしまった。
誇り高く生きていたあの頃が遠い昔のようだ。