麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる


日本語を普通に話す彼の話によると、彼女に困っているところを助けてもらいお礼をしようと思ったら、彼女が体調を崩しているのにバイトに行こうとしているのを見て自分で代わりを名乗り出たという。
迷惑はかけないので今日一日だけ、という言葉にオーナー夫妻は元々今日の昼のバイトは撫子だけだったのでお願いすることにした。

すると無愛想ではあるもののきっちり仕事はするし、丁寧でもある。
あげくあのルックスで店のドアを開けて客を見送れば、外にいた女性達がイオンを見て吸い込まれるように店に入ってくる。
なので一切テーブルが空くこと無く、むしろ順番待ちも発生しながらランチタイムを終了した。


「こんなにお客さんがランチタイムに入ったのはいつぶりかしら」


料理人のオーナーは無言でまかない飯を調理中、妻は感慨深く言いながら山となった食器を洗っている。
向こうではイオンが淡々とテーブルを片付け、ずれたテーブルや椅子の位置なども直していた。


「それにしても川根さんとはどんな関係なのかしら。もしかして恋人かも」


ふふふ、と楽しげに笑う妻に、無愛想な夫が皿を突き出す。


「出来たぞ、ガーリックライス。
彼だけご希望通りニンニク多めだ」