麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる



「信じてくれるかはわからないが、私はヴァンパイアだ」


神妙な顔で話し出したイオンに、はは、冗談を、と撫子は言いたいが、本当の事だとわかっている。
理解したくないから笑って誤魔化したいが、そのような事は無理だ。

そんな存在は伝説や小説の中だけだと思ったのに自分の目の前にいる。
もしかして夢の中だろうかと思いたいがやはり無理だろう。
見るからに困惑と動揺を隠せない撫子を見て、イオンは目を伏せた。


「事情があって旅をしていた。
最初は欧州を渡り歩いていたが、恥ずかしい話だが吸血出来る相手になかなか巡り会えなかった。
それもヴァンパイアというのにニンニクを食さないとならず、余計女性からは遠ざけられてね。

日本人の女性は献身的と聞いて日本まで来たのだが、撫子のような事をするのはきっとまれなことなのだろう?
空港からあの公園にたどり着くまで色々と声はかけられたが、俺の外見が目当てだった。
そんな献身的な撫子に、俺は自分が飢餓状態だったとはいえ非常に無礼なことをしてしまった。
簡単に許してもらえるとは思わないが出来るだけの償いをする。遠慮無く言って欲しい」