イオンの罪は実の父親を殺害したことだ。
屋敷の者達がワイズミュラー家の当主の部屋で、血まみれのイオン、その足下に落ちている銀のナイフ、そして首を切られ殺された当主と人間の娘。
部屋に敷かれた緑の絨毯は朱色に染まるほどに血が流れていた。
そこに王家に近いワイズミュラー家と敵対していた家が混乱している状況にタイミング良く入り込んできて、当主と逢い引きしていた人間の女を息子イオンが逆上、殺害と決めつけ広めてしまった。
ヴァンパイア貴族で親を殺すのは大罪。
ヴァンパイアである以上簡単には死なない、それを確実に死ぬ方法で仕留めるのは強い殺意の表れ。その上実の父親だと原則死刑になる。
元々王族に近く王にも信頼され重用されていたワイズミュラー家は敵が多く、今回の一件で声高に反ワイズミュラー家の者達はイオンへの死刑を望んだ。
だがワイズミュラー家は嫡男であるイオンしか継ぐ者がいない。
ワイズミュラー家に使える者達や一族の者達の陳情で死刑は間逃れたものの、当時の記憶の抹消、本来ニンニクを嫌うのにその摂取を義務づけ、そして供もつけずに一人国外追放となった。



