麗しきヴァンパイアは大和撫子に救われる



「良いのですか、申し開きをしなくても。これでは奴らの思うつぼです。
そして急な国外追放などあまりに酷い罰ではありませんか、ヴァンパイアである我々にこの国から出て行くことは」


必死に話しかけてもイオンは表情も無く歩いていたが、足を止める。
厳かな王宮の廊下には二人しかいない。
ようやくイオンがアミルに視線を向け、


「申し開きをしても俺が父親を殺した事実は消えない。
そもそもその罰としてなのか何故か殺した際の記憶を消された上で国外追放を言い渡されるなどむしろ恩赦だろう。
本来死刑であってもおかしくはなかった」

「我々はイオン様が当主を意味なく手にかけるなど思ってはおりません。
人間の娘が死んでいたことを考えれば何かあったに違いないのです。
それを詳しく調べずに罰としてその時の記憶を消すなど聞いたこともありませんし不自然すぎます。
このようなおかしな状況を受け入れれば、ワイズミュラー家を陥れようとした者達が理を得るだけで」

「そうだな、だが仕方が無い。
王は私の記憶を消し、国を出る代わりに家を潰さないと約束された。その家をお前達が家を守ってくれる、十分だ」


少しだけ表情を和らげた主を見て、アミルは何も言えなくなる。