~宝生唄~


 今週末は、同じく一人暮らしの英介さんが、私のアパートに泊まっていた。

 朝起きると、隣には無防備な幼い表情で英介さんが寝ている。

 そっとベッドから離れると、腕枕から解放されたからか、英介さんはようやくこちらに背を向け寝息を立て始めた。

 いつもの習慣で午前六時には目が覚め、私は一人キッチンに立つ。

 冷蔵庫を開けるとレタスや卵がある、今朝はパンを焼いて洋食にしようか。

 雅君の働くスーパーで買った、ライ麦パン。雅君、最近、ここでバイト始めたって言ってたな。

 あんなに遠く手の届かない距離にいたはずの雅君が、今は近くにいる。

 近況を知り、雅君は今も変わらず夢に向かって頑張っていた。