「……もう少し、待っててほしい」 「宝生のことを?」 「うん……お願い、します」 それは、大原と別れるまで、ということだろうか。 それ以上聞いても何も言わず、俺が力を緩めたらスルッと間をすり抜けて、先を歩き始める。 隣に並ぶと、先程とは打って変わって距離をとる宝生が気に食わず、手を握る。 「待ってるよ」 「……うん」