~宝生唄~
付き合っているの? と、職場にて、気分屋のおばさん社員から尋ねられた時には、冷や汗が出た。
「昨日、二人がスーパーで一緒にいる所、見ちゃったのよ」
「え、あ……」
いずれはこうなるとは分かっていたが、いきなり言われ、しどろもどろになる。
そして、ちょうど通りかかった英介さんを呼び止めたおばさんは、彼にも同じことを言う。
隠すことではないが、言葉を選んでいると、英介さんがにこやかに返事をした。
「そうなんです、一年前から付き合ってるんです」
「あらま、そうなの? もう結構経ってるじゃない」
噂が好きそうなおばさん、絶対に広められる。それを分かって英介さんの隣にいたが、まだ心の準備ができていなかった。