名前なんてどうでもいい
嵐は嵐
ずっと俺たちの友達であることに変わりはない
「でも…なんでそんなことしなくても嵐は俺らの友達やのに!」
感情的になった俺は朱羽ちゃんに純粋な気持ちを持ちかけた
朱羽ちゃんは俺に向かって向き合い
嵐の気持ちはきっとわからないと
そういった
俺になら嵐が不当に奪われてしまったものの価値をわかるだろうと
きっと嵐が不当に奪われてしまった大切なものは
大事な愛娘である朱那のことだろう
嵐が何よりも守りたかったものが娘である朱那だったのだから
なぜこの子は…朱羽ちゃんは
憶測とはいえこんなにも嵐のことがわかるのだろう
もしかしたら朱羽ちゃんも何かを不当に奪われてしまった子なのだろうか
嵐のように…
そんな朱羽ちゃんの口から突拍子もない言葉が飛び出てきた
「得意なんです。国語」
「は???え??」
考えるより先に口から声が出ていた
国語が得意…?
それなんの関係が…
「作者の心情を応えろって問題。好きなんです。昔から本ばかり読んでいたから」
思考回路がまとまらないうちに
朱羽ちゃんはそう言った
俺はそれに対してなるほどな…と言い残し
笑った。
ただそれは言葉の意味を理解し笑ったのでは無い
笑顔や冗談の中に混ざり合う
西朱羽の闇が垣間見えたからだった
この子の闇は嵐より深いかもしれない
その底知れぬ闇の深さに俺はゾッとした

