飲んで、のまれて 愛されて

俺のガチ恋客のお会計が終わり
エレベーターまで彼女を見送る


1回まで降りたエレベーターを待つ間の沈黙の時間
女は背伸びをしながら俺の首に手を回す


明らかにキスを求めるモーション




ひかりが近くで照らせば照らすほど闇は深くなる

闇は便利だ悪い所を全て包み隠してくれる
良いことも悪いことも何も見えない



俺がここでキスを拒みご法度に触れなかったとしてもこの善い行いは闇にまみれて誰にも気付かれない


それに比べて
今ここで俺が客にキスをしたところで誰も気付かない
むしろ俺の中では女に迫られ、いくら可愛くないとは言えど一瞬だけ欲を満たすことが出来る
悪いことの方がメリットがでかい





「そんなこと男にしたらあかんよ…!気つけて帰りや。」




俺は女の子をそっとエレベーターに押し込んだ


俺は闇そのもの

闇は闇に飲み込まれることも無く闇に落ちることもない



信じてくれている友のために

俺を頼りにしてくれている 柚成の為に俺はご法度には触れない