とある日。
私は家庭科の授業中に手を切ってしまって、保健室に来ていた。
けど先生はいないようで、勝手に漁るのもはばかられてどうしようかと思っていたところだった。
急に奥のベッドのカーテンが勢いよく開かれる。
「城山先輩…?」
先輩はまた具合が悪そうで、ふらふらしつつも近寄ってきた。
「血…。」
「血…?あっ…。」
先輩の視線の先は怪我をしている私の手。
「…あ、秦野ちゃんだ。怪我したの?大丈夫?」
今私だということに気づいたようで、視線を動かした先輩と目が合う。
「調理実習でちょっと…。でもそんなに深くないとは思うので大丈夫です。
先輩こそ大丈夫ですか?」
「たまにあるから大丈夫。
それより怪我見せて。治してあげる。」
「治す…?」
言葉の意味はよく分からなかったけど、とりあえず言われた通り先輩に怪我した部分を見せてみる。
「ちょっとごめんね。」
先輩はそう言うと、出血している部分をゆっくりと舐めとった。
「ひゃっ。」
その行為に驚いて慌てて手を引っこめる。
「ごめん。…でも今のでそんな深い傷でなければ治ってると思うから。」
怪我をしていたはずのところを見れば、確かに傷がふさがっている。
「…ほんとだ。」
「許可もなく舐めたりしてごめんね。
治ったみたいでよかった。」
「…ありがとうございます。」
いまいち状況はわかってないけど、とりあえずお礼は言っておく。
「どういたしまして。」
ニコッと笑った先輩の体が揺れる。
そして先輩の体がそのままこちらに倒れてきた。
「えぇ!?」
咄嗟に受け止めようと頑張ったけど、身長155cmに多分180cmは超えてるであろう先輩を受け止めきれる訳もなく、尻もちをつく。