「秦野ちゃん。」


「はい?」


「普通は順番が逆だとは思うんだけど、」


「はい。」


「…俺と付き合ってください。」


「…はい、もちろん。」


「ありがとう。」


先輩はまた勢いよく抱きしめてきて、その勢いのままキスしようとしたけど、すんでのところで離れていく。


「さすがに、ついさっきまで秦野ちゃんの血を吸ってそのまま、っていうのはね…。気持ち悪いね、ごめん。」


苦笑いで私の頭をぽんぽんっとする先輩に、私は首を振る。


「別に気持ち悪くないですよ。
私だってニンニク食べたあとに先輩にちゅーするかもだし。」


「ははっ、それはいいね。じゃあお言葉に甘えて。」


チュッと軽く触れるだけのキスをして、いつもの満面の笑みで私を見る。


「芽衣ちゃん大好き。」


「私も…、好きです。」


「久々に会えただけで嬉しいのに、もう何百年も一緒にいられることになるなんて、このあとクソ親父と揉めることを想像しても幸せ。」


「お父さんと会う予定が?」


「多分そのうち人間と契約結んじゃったってバレて来ると思う。」


「…それは私のせいでは……。」


「俺もその状況を受け入れたし、俺のせいでもあるよ。
大丈夫。負けないし。」


「あの、じゃあ、また血が足りなくなったらいつでも言ってくださいね。」


「うん、ありがとう。
でもそのためには、芽衣ちゃんがいっぱい食べて元気でいてくれないと困るからね。」


「はい。」


「あ、あともう一つ。」


「なんですか?」