「秦野ちゃん、契約のこと覚えてる?」


私が思い出したことに気づいた先輩は、そのまま話を進める。


「…あ、はい。覚えてます。」


「俺の血を舐めたことで、俺と秦野ちゃんとの間に契約が結ばれた。」


「え?なんで?」


「契約を結ぶには血の交換をするんだけど、俺も以前に秦野ちゃんの血を貰ったことあるから…。」


「それでうっかり契約が結ばれちゃったってことですね。」


「俺親父に契約を破棄できないか聞いてくる。」


「待って。」


「こういうのは早い方がいいから。」


「もう私のこと好きじゃないですか?」


「そんなわけない。」


「じゃあ好きですか?」


「好きです、とても。」


「私も好きです。」


「でもさすがに契約を結ぶのは……。」


「一生のお願いです。
私やっぱり先輩と生きたい。」


「…言ってる意味、わかってる?
本当に俺から離れられないし、何百年も俺と一緒だよ?」


「最高じゃないですか。」


「…秦野ちゃんのそういう変に肝据わってるとこ好きだけどさぁ。」


「一生に一回のお願い、聞いてくれないんですか?
たとえ何百年生きようとも、先輩に叶えて欲しいお願いはこれだけだって言ってるんですよ?
先輩のこと優しい人だって思ってたけど、お願いひとつすら叶えてくれないなんて……。」


「本当にいいの?」


「はい。」


「本当の本当に?」


「本当の本当に。」


「わかった。じゃあもう離さない。」


そういって先輩は、私を力強く抱きしめた。

私もそれに応える。