春休み。
しばらく着ないし制服を洗おうと思って制服のポケットたちを漁っていると、見覚えのない黒い小瓶が胸ポケットから出てきた。
なにこれ。何が入ってるんだろ。
ん〜、黒いから中見えない。開けてもいいかな。
私は手のひらに小瓶の中身を出してみる。
「なにこれ……。」
紅い液体。それは血のようにも見えた。
私は何を思ったか、その液体を舐めてみた。
口内に鉄の味が広がる。
「うわっ、血だ…。」
本当になんで舐めてしまったのか自分でもよく分からなかったけど、血を舐めたくせにそんな不快でもなく、不思議だな〜とその紅を眺めていた時だった。
自分の部屋の窓がドンドンッと叩かれたような気がした。
気のせいかなと思いつつ、窓を開けて外を確認する。
誰もいないし何もない。
それを確認して、窓を閉めて振り返ると、見知らぬ男の人がそこに立っていた。
「え、誰!?」
「秦野ちゃん、もしかしてそれ舐めた?」
私の質問に答えないまま、焦った様子で私に尋ねる。
「確かに舐めましたけど、あなた誰……、城山先輩?」
なぜかその人の名前が浮かんで、声に出す。
そうしたら次々に忘れていたことを思い出した。