城山先輩の言っていたとおり、そのまま本当に特に何をされるわけでもなく、たまにすれ違ったら話しかけられるくらいで、日々が過ぎていった。

クラスの子いわく、城山先輩は学校一のイケメンらしく、女子の間では有名で人気も高いらしい。

私は全く知らなかったけど。


そんなある日、前先輩を見かけた教室付近の廊下で、壁にもたれかかって座り込み、項垂れている城山先輩を見かけた。

なんだか具合が悪そうだし、これはさすがに声をかけた方がいいかな?


「あの……。」


「…あ、あぁ、秦野ちゃん。」


顔は笑っているようだけど、声は心なしか元気がない。


「大丈夫ですか?保健室行きます?」


「大丈夫だよ、ただの貧血だから。心配してくれてありがとう。」


「大丈夫そうには見えないですけど…。」


「いいの〜。ほら、見たでしょ?俺の本性。なにかされる前に早く行った方がいいよ〜?」


「でも……、」


「そんなに言うなら血くれるの?」


「血…。」


「…冗談だからそんな怖がらなくても大丈夫だよ。
それに秦野ちゃん、生理中でしょ?そんな日に吸血されたら危ないよ。早く行きな。」


「……なんでそんなこと知ってるんですか。」


「え、あ、ごめん。血の匂いに敏感で……。
ごめん。本当にもう行って。」


「…はい。」


これ以上いても何も出来ないし、言われた通りにその場から離れるけど、先輩のことが心配で何度も振り返ってしまう。

……大丈夫かな。