卒業式の日。


私は先輩を探した。

先輩は教室の中央でたくさんの人に囲まれていた。


さすがにちょっと入りづらいな…。

人が減ってくれないかなとしばらくその光景を見つめていると、ふとこちらをみた先輩と目が合った。


「あっ、せんぱっ…。」


今絶対目合ったのに逸らされた。

そう思ったら私を無視し続ける先輩に、なんか段々腹が立ってきたかも。


「城山先輩!」


私はデカめの声で先輩を呼ぶと、卒業式ムードの教室に乗り込む。

そして先輩の腕を掴んで、教室から抜け出す。


「秦野ちゃん?どうしたの?なんか…、怒ってる?」


「怒ってません!」


「そう?」


「最後くらい少し話す時間くれてもいいですよね?」


「いいよ。」


先輩は大人しく私に連行される。


「この教室って…。」


私は先輩と初めて会った教室に先輩を連れて入って、鍵を閉めた。


「先輩がよく女の人といた教室。」


「言い方…。いや間違ってはないけど。
でもなんでここ?鍵まで閉めて。」


「…私も吸血してもらえませんか。」


「え?」


「ダメですか?」


「…血吸われたいの?」


「はい。」


「なんで?」


「先輩の連絡先も知らないからこれで最後になるって思ったら、最後くらい先輩の糧になりたいなって。」


「最近は体調も良いし大丈夫だよ。」


「私の血だと何か不足ですか。
それとも私だけ先輩を忘れることが許せないですか。」


「そっか、忘れたかったよね。
俺の勝手な私情で秦野ちゃんだけ吸血鬼のこと忘れられないなんて、酷だよね。」


そんなこと思ったことない。

けど、先輩を忘れてしまえる簡単な方法に、少し惹かれたのも事実ではある。


「はい、忘れたいです。」


そう言えば優しい先輩は私のお願いを聞いてくれると思って、思ってもないことを口にした。