《翌日》
先輩は言っていた通り血を譲ってもらったのか、元気になって学校にきた。
「秦野ちゃんおはよう。」
「おはようございます。」
先輩は私に近づいてきて、怪訝な顔をした。
そしてそのまま、私を人気のない場所まで連れ出す。
「どうしたんですか?こんな所まで来て。」
「秦野ちゃん、怪我してない?」
「あぁ、ちょっとだけ。でも大丈夫ですよ。」
「見せて。」
「大丈夫だから戻りましょう。」
私の言葉を無視して私の腕を掴む。
そして右腕の袖を捲り上げると、先輩の表情は険しくなった。
先輩はひと言も喋らず、私の腕に貼ってあるガーゼを外した。
「これ自分で傷つけたよね?何してんの?」
「先輩に少しでも血を分けてあげられたらって思って…。でも全然上手くいかなくて。」
「こんな何回も切りつけて、なにしてるの、ほんと。」
怒ってるような、でも泣きそうな顔をして私を見る先輩。
「だって……」
「俺のせいだね、ごめんね。
せめて跡が残らないように治させて。」
私の腕に先輩の唇が触れたと思うと、直後に生暖かいものが触れた。
それは間もなく離れていって、私の腕の傷跡は綺麗に治っていた。
「……俺が秦野ちゃんに好きとか言ったのが間違いだったんだ。惑わせるようなことしてごめんね。
もうやめよう。もう近づいたりしない。だからもう自分を傷つけるのはやめて。」
「なんでそうなるんですか…!
私は先輩と居たくて……。」
「ごめんね。」
先輩はそれだけ言うと、私に背を向けて先に戻ってしまった。