「あ、やば。見られちゃった。」


イケメンがうっかり、って顔でこっちを見て微笑む。

は?え?何?誰?どういう状況?

これ現実?夢?

だって牙…。そして見間違いでなければ、そこには血が……。

これをそのまま受け取れば明らかに、吸血鬼がエロいシチュで女子高生の血を吸っている場面。


「おーい、大丈夫?びっくりしちゃった?」


そのイケメンは私の目の前まで来て、私の顔を覗き込む。

彼の唇は紅く色付いている。

それは唇本来の色というより、血の色……。


「うわあああ!」


私は驚いてその場から走って逃げる。


教室まで戻ってきて気がついた。

…頼まれたプリントを持って逃げてきてしまった。

あのやばそうな人がいた教室にまた行かないといけないことを考えると、先生への言い訳を一旦考えることにする。


校内に吸血鬼と思わしき人がいました。

なんてバカ正直に言ったら、私が変な人呼ばわりされてしまうだろう。


もうほんと誰なの、あの人。

あそこで一体何してたの。

……いや、知らない方がいい気がしてきた。


私は一旦教室で今日の課題を30分程こなしたあとに、もう一度行ってみることにした。