そんなことを考えながら玄関の段差を越えようとすると、
突然力が入らなくなって視線が大きく揺らぐ。
やばっ…
「あっ…」
さっと手を出して支えてくれたのは、もちろん彗だった。
「ごめんっ、」
「あつっ、…相当熱あるじゃん」
ひやりとした冷たい物がおでこに触れる感覚。
彗の手だって気づくには時間がかかった。
心配する彗の目と視線が交わって、至近距離で見つめられる。
「っ、…彗っ、」
ちっ、近い…
「こんなになるまで我慢するなよ」
呆れた声。
「だって…休んだら、彗の勉強が遅れるから…」
そんなことになったら、私の存在意義はなくなっちゃうでしょ?
そんなのどーでもいいよ、って呆れた表情を見せて
「…もっと俺を頼れよ」
「彗は忙しいから」
頼れるわけないよ。
いつも倒れそうなほど頑張ってるのは彗のほうでしょ?
「じゃあ光には頼ってるわけ?」
「…光は弟だもん」
光だって、受験生だし、家のことは最大限手伝ってくれる。



