「ご、ごめん…」
後ろから抱きしめられたまま、そう小さく謝罪する。
「はあ…心臓止まるかと思った」
安心したのか、私の存在を確かめるようにさらにぎゅうっと強く抱きしめる彗。
ええ、なんで離してくれないのっ…?
「海ってたまに危なっかしいから、まじで困る」
ほんと目ぇ離せない、って。
耳にかかる吐息が、くすぐったい。
こんなのおかしくなりそうっ…
「彗っ…」
そういうとゆっくり名残惜しそうに離された腕。
向かい合う形になって、
「海に死なれたら俺生きてけねぇ」
って脆く美しく笑う。
「なっ、」
こうやってありえないくらいストレートで、大切にしてくれる。
胸が鳴らないわけがない。
これだから、彗から抜け出せない。
それから彗に車で送ってもらい、自転車は後日取りに行って、パンクを修理することにした。
家に着いたのは夜中の2時を回っていた。