ポチャンッ、ポチャンッ、雨粒が水溜まりに跳ね返り、私の心を揺らす。

「ずっとさ、俺、恵口さんのこと好きだから見てた。でも、恵口さんはちっとも俺を見てくれようとしない」

「塩見君」

「それでも、時間が経てばと思っていたのに、嶋原が帰って来た途端、恵口さんは嶋原のことしか見えてない」

「……塩見君」

「きっと恵口さんは、嶋原のことを特別だと思ってるんだよ」

 私が、嶋原君のことを、特別に……。

 濡れながら、塩見君は苦し気に笑っている。

「嶋原と、楽しんできなよ。俺のことはいいから、自分の気持ち、ハッキリしてくればいいじゃん」

 そこまで言うと、塩見君は投げ出した二本の傘を取りに行って、私に手渡してきた。

「俺、帰るわ。強引にキスして、ごめんね」