~恵口希花~

 嶋原君が世界を消失して、一ヶ月、二ヶ月……。

 季節は四月、五月、と春を迎え、やがて六月。

 クラス替えはあったものの、理系国立大を目指す私は、また石黒さんや塩見君と同じクラスになることができ、いつも三人で行動することが多かった。

 一方で、雨人の嶋原君と毛利さんは、出席日数が足りずに留年、二人は同じクラスになって取り残されてしまった。

 三ヶ月を過ぎても、天気が崩れる予定はなく、梅雨の季節になっても空は晴れているか、悪くても曇っているだけ。

 どんどん雨が遠くなっていく。

 新しい記憶はどんどん上書きされ、嶋原君との思い出が遠くなっていく。

「恵口さん、どこ見てんの?」

「雨……降らないな、と思って」

「そうだね、早く嶋原に帰って来てほしい?」

「……うん」

「俺も、思ってるよ」