二人並んだ靴が嬉しくて、でも寂しくて、複雑な心境に陥る。

「また、帰って来れるよね」

「うん、きっと」

「……また、こっちで待ってるね」

 世間では、もう帰って来れないのでは、と言う声が多いのは知っている。

 それでも、無力な私達は、博士を信じることしかできなかった。

 ふと、ベンチに置いた右手の端が嶋原君の左手に触れ、すぐによけようと思ったものの、力を抜いて置いていると、振り払われはしなかった。

 両者無言で、雨に濡れる車が通るロータリーを見つめる。

 ──私は、嶋原君は、今、何を考えているのだろう。

 私は嶋原君のこと、どう思ってる?

 嶋原君は出会ったばかりの私のこと、どう思ってる?