◆ side優理



「ねー稜くん。

今日って、しずくん来ないのー?」



昼過ぎ頃。

コンビニで買ってきたパスタとスイーツを食べ終えてから、思い出したかのように口を開く咲耶。……来て3時間経って、気になったの今かよ。



「ああ、うん。用事あるって」



「まつりんも?」



「一緒にいるんじゃない?」



にこりと優しく微笑んで、弟に返す稜介。

……一緒にいる、ねえ。



確かに俺も変だなとは思った。

まつりが来ないなんて珍しいし、快斗の件以降雫ちゃんが倉庫に来ない日は理由をしつこく尋ねてたのに、今回はそれも見掛けなかった。




「デートかよ。つまんねー」



"相手が俺じゃねーから"って言いてえの?とか。

快斗の何気ない一言に突っかかりたくなる自分にムカつく。



何がきっかけで一緒に過ごしてんだろう。

俺がどれだけ誘っても、雫ちゃんの気は乗らなかったのに。



「優理。顔に出すぎ」



「ん~なにが?」



「うらやましいって顔してる」



稜介は優しいと思う。

俺はいま、"うらやましい"なんて生ぬるい顔してねえと思ってるよ。それをオブラートに包んでくれるだけで、すこし感情の波を宥められたようだった。