「そんなに見つめてくれるなんて、夏菜子も俺のことを好きになってくれたのかな」

 盛大な勘違いである。

 ヴァンパイアというのは身勝手な生き物なのだろうか。

 夏菜子は急いで否定する。


「ち、違うわよ……、ヴァンパイアなんて本当に存在するなんて……」



 藍の腕を掴んだままの先生が『知らなくても仕方ないわ』と言い出した。


「ヴァンパイアは本当に存在するのよ。

世間一般にはもう忘れ去られた存在かもしれないけれど、ちゃんとヴァンパイアの血は受け継がれて残っているのよ」


 先生の話を聞くところによると、昔からヴァンパイアは世界各国に存在していて、人間の血を吸うという性質は一致していた。


 ところが、太陽の光が苦手だったり、十字架が苦手だったり、今もおとぎ話なんかで残っているようなタイプのヴァンパイアはどんどん数を減らしていったらしい。




 それでも血を絶やすわけにはいかない。




そう思った彼らは、自分たちで進化していって昼も夜も関係なく生きて行けるように、そして苦手なものも無くしていった。


 だけど、血を吸うことだけは止められなかった。


 でもここ数十年で、血を吸わなくても生きていけるヴァンパイアはとても増えてきた。


 嗜好品として血を好む感じだ。

タバコやコーヒーと一緒である。



 そして藍もそのうちの一人であるということだ。



 親や親戚が全員ヴァンパイアというわけではない。

 親の遺伝を受けるものも居れば、隔世遺伝だったりもする。


 藍の家族や親戚には一人だけヴァンパイアが居るそうだが、遠い親戚で隔世遺伝だと思われる。