「おい、三好は大丈夫か?」

 担任が藍を自席に座らせると夏菜子の方を向いて体調に変化がないか確認し始める。



 近くに座っていたクラスメイトが叫んだ。

「キスマーク付いてる!」



 夏菜子は吸われた場所を触ってみたが、傷のようなものは感じ取れなかった。

 指を見てみても、血が付いているわけでもない。

 遊ばれた? からかわれたのかな?


 おそるおそる藍の方を向いて疑惑の目を向けてみると笑顔で返事が返ってきた。


「血は出ないよ、数百年前の吸血鬼でもあるまいし。

でも本当に血は吸わせてもらったよ。とても美味しかった」



 どこまで本当の事なのか分からなくて、全く心が落ち着かない。


「本当に、夏菜子は可愛いね。そのベリーショートも似合ってる。

少し髪が茶色いのは地毛かな?

 化粧っ気がないのも俺好みだし、なにより可愛くて気に入った。

 一目惚れしちゃったよ」




 男子生徒たちがヒューヒューと音を出し始めて教室内が騒がしくなる。

 それを制するように担任が声を上げているが、今はそんなことを気にしている余裕はない。



 夏菜子は自分が可愛いなんて思ったことがなかった。


誰かから告白されたこともなかったし、クラスの中で目立つような存在でもない。



 怒涛のようにいろんなことが起こり、とうとう夏菜子は失神してしまった。