「ーーちょ、涼近いってば……っ!」


「えー……そんなことないよ」



あるんだよ、それが。だって私、今どこに座っていると思ってるの?


涼の膝の上だよ?


加えてお腹に腕を回されちゃ、身動きが取れないから余計に困る。


じわじわと、顔に熱が集中していって。




「あ、照れた」


「照れてないもん……っ!」


「ふは、かわいー」


「~っ、もう……!」



ふわっと微笑まれては、もうおしまい。



「ーーーちょっとー!君たちふたりだけじゃないの分かってる?」



……ある意味、ね。



「ご、ごめん日葵……」


「本当!彼氏がいない私への当て付けか!なんだよこの甘すぎる空間はぁ~」



確かに。付き合ってからというもの、涼はずっとこの調子。


なんでも甘すぎるのだ。



今だって、違うクラスなはずなのに当たり前に私たちのクラスにいるし。



「……っわ、」



ぼーっと考えていると突然、背中に感じたこつん、と聞こえるような感覚。


ちら、と後ろを見ると、さらさらの髪の奥の甘えるような瞳と目が合った。



「……ちゃんとかまって」