心臓の鼓動が、一瞬で早くなる。
「……っ、なんで……」
「…………入れば」
「、え」
涼はぐいっと私の手首をとって、自分の傘に入れてそのまま歩きだす。
必然的に、手首を捕まれている私も歩くことになって。
ーーなんで、こうなったんだろう。
触れているところ、あつい……。
こんなの、相合傘じゃん。
お互いの肩がときどき触れて、そのたびにびくりとする。
普段、いや、いつも話していたときよりも近い距離に鼓動は速くなるばかり。
…ち、かい……。
どうしたらいいか分からなくて、戸惑う。
傘の外はザーザーと雨の音でいっぱいなのに、中は静かで……まるで、世界に二人だけみたい…なんて。
「……ねえ、涼」
「…………」
「なんで、あそこにいたの……?」
ずっと気になってたこと。私は補修だったけど、頭の良い涼は補修なんてするわけない。
じゃあ、なんで?
「……べつに、たまたまでしょ」
やっと口を開いたかと思えば、少しぶっきらぼうに放たれた言葉。
でも、それだけで何かが込み上げてくる。



