「涼ー!起きてー!」



すやすやと気持ちよさそうに眠る彼のベッドに近寄って、目覚まし代わりの大きな声を出す。


だけど、そんなのはふかーく眠りについている彼には効かなくて。



「すーずー!おきてー…」


「……んー……」


「もー…こうなったら……えいっ!」



精一杯肩をゆすって、最終的には彼がぎゅうっと抱きしめている抱き枕をばっと奪う。こういう時の、彼の取り扱い説明書。最終手段、抱き枕を奪うべし。



もう7時45分なのに。いくら家から学校が近いとはいえ、これ以上寝ていると遅刻しちゃう。


少し焦っていると、パチリと目の前の彼がが目を覚ました。


ゆっくりと瞬きされて、ぼんやりとした瞳が私を捉えている。


まだ眠たそうに、とろんと目尻が下がっている彼の雰囲気は、ふわふわと柔らかい。



「……ん、…おはよ、羽衣」


「うん!おはよう、涼」




ーー私は今日も、涼と「おはよう」を言う一番乗り。




まったく深い意味はなくて、ただただ涼が朝に弱いから、起こしているだけ。ただ、起こしてって涼に頼まれているから。部屋に自由に出入りできるのも、この私たちの関係のせい。



ーそんな私たちの関係は“幼なじみ”。


ただただ、それだけのこと。