…でも。


——単なる営業手法であれば、3か月間も時間が必要だったのかな。一度も私が嫌がることをしていないのは本当だし、アキラ君が私のこと、本気だって言ってくれたあの表情は真剣だった。嘘を言ってるようには聞こえなかった。


由里はベッドから体を起こすと「…もう一度、ゆっくり話そう」と呟いた。


その時。


突然雷が鳴った。と、同時に遠くから雨の音が聞こえ、やがて由里のマンションにも大雨が降り注いだ。


夕立だ。


「…傘っ!」


由里は傘を2本持って、部屋を飛び出した。


——昼間はあんなにいいお天気だったのに。アキラ君、これじゃびしょ濡れだよ!


おそらく最寄り駅までは来ているはず。


由里が履いているサンダルは、既にびしょ濡れだ。でも構わず駅まで走って向かった。


駅に着くと、たくさんの人が雨宿りしていた。
…が、その中にアキラの姿は見えない。


——まだ電車に乗ってないのかな。


由里は差してきた傘を閉じると、階段下の壁際でアキラを待った。