由里はそこまで聞いて顔を上げてアキラを見た。 アキラはやっと顔を上げた由里を見て、ホッとした表情を見せた。 「由里さ—」 「ごめん、私一人で帰る。」 由里があえて一人で、と言った意味を、アキラは察したようだ。 拒絶され、ショックを受けた表情のアキラ。 でも由里に、そんなアキラを気遣う余裕があるはずもなく。 由里は無言のままアキラの手を離し、アキラの脇を通り過ぎると、一人で地下鉄の改札に続く階段を降りていった。