だがアキラは、差し出された名刺に目もくれず、フイと横を向いた。
「興味ないですね。すみません、用事あるんで失礼します。」
ペコっとお辞儀をしてスカウトをすっぱり断ると、アキラは由里に「いこ」と言って手を握ってきた。
そしてそのままスタスタと歩き出す。
——うわ!
由里は不意を突かれてコケそうになりながらも、何とかアキラのスピードについて行った。
「これで何回目だよ。マジで面倒だな…」
どうやら、あの手の勧誘を受けたのは初めてではないようで、ウンザリしている様子だ。
アキラがぶつくさ言いながらずんずん歩く後ろで、由里は必死でついていきながら繋がれた手を見つめた。
——男の人の手って感じ。大きくて、しっかりしてて…。
そう考えていると、みるみるうちに顔が火照ってきた。
男性に手を握られている感覚が久々過ぎて、喜びが隠せない。



