アキラとの生活が始まってから、もうすぐ3ヶ月が経とうとしていた。


2人での共同生活もだいぶ慣れてきたある休日。


由里はアキラと一緒に外出していた。


きっかけは、アキラが映画の無料券を持って帰ってきたことだった。


買い出し以外でアキラと出掛けるのは初めてだからか、はたまた久しぶりのデートというシチュエーションだからか、由里はなんとなく緊張していた。


「それにしても、映画のチケットくれるなんて、優しいね。アキラ君の職場の先輩。」


地下鉄の車両を降り地上へ出て、アキラと並んで映画館へ向かいながら由里が言った。
今日は白い雲がぽっかり浮かんだ青空が頭上に広がっていた。


「うん。年上の男の人が多いからか、みんな俺のこと気にかけてくれてさ。俺、今の業界で働いたことないから分かんないけど、雰囲気もすごく良い方だと思う。」


嬉しそうに話すアキラを見て、由里はホッとしていた。


アキラが由里の家に居候し始めた頃は、なかなか合う仕事が見つからないようだったが、建設会社のスタッフとして今の職場で働くようになってからは、アキラの様子が明るくなってきているような気がしていた。