「ちょっ…アキラ君!?変なことしないって…」


「え、ハグって変なことなんですか?」


「いや、えーっと…」


由里が、言葉を選んでいると、アキラが由里を抱きしめる腕を緩め、上から由里を見下ろして言った。


「俺、一生懸命頑張りますんで。よろしくお願いしますね、由里さん。」


——イケメンが私の腰に手を回したまま見下ろして、微笑んでいる…。


普段ならあり得ないシチュエーションに、由里は一瞬、ぼーっとしたが、すぐに我に返ってアキラから離れた。


「もう!そういうの慣れてないんだから、簡単にそういうことしないの!!」


「えー、いいじゃないですか、ちょっとくらい…」


「よくないっっ!!」


由里は久々のドキドキを抑え込みながらアキラの横を通って洗面台へ向かった。


寝る準備でもして気持ちを切り替えようと、歯ブラシを持ち、鏡を見た。


まだ頬が紅くなっている。


——っとに、イケメンはこういうことしても許されるからいいよねっ!


ガードがついつい低くなってしまった自分を恨みながら、由里は歯を磨く。


こうして、ヴァンパイアのアキラとの居候生活が始まったのだった。