「…傷口から血を吸ったことは変なことに入らないですか?」


由里は言われて思い出した。


「ああ、手を切った時のこと?」


そう言うと、アキラはコクリと頷いた。
それを見た由里は「うーん」と唸って少し考えてから言葉を続けた。


「まあ確かに、変と言われればそうかもだけど…。でも悪いことしたなって思っての咄嗟の行動だったんじゃないの?なんかこう…変な気持ちでしてるワケじゃないって何となくわかったよ。」


由里がそう言ってうんうんと一人で頷く様子を見て、アキラは呆気にとられた様子で由里を見た。


「…由里さんって何かお坊さんみたいですね。」


「え!?お坊さんって!どういうこと??」


由里が笑うと、アキラは真顔のまま言った。


「なんか悟り開いてるっていうか、達観してるって言うか…。」


「まあ、32にもなればねえ。ある程度のことは許容できるくらい肝が据わってくるもんですよ。」


由里が笑いながらそう言うと、アキラは真顔のまま「そっか…。」と呟いた。そして、言葉を続ける。