結衣に話を聞いてもらったその日の夜も、残業ですっかり遅くなってしまった。


正直、アキラが朝から夜まで何をしているかは分からない。
とりあえず金銭的なものを家に置いておかなければ別にいいか、と割り切った気持ちで家を出ている。
今日も、帰ってから家にいるかは分からないが、とりあえずどこかで元気に過ごしてくれれば、由里としてはそれでよかった。


マンションに着き、部屋の鍵を開けて中に入る。


「ただいまー」


そう言ってみたが、部屋は電気が消えていて、人がいる気配がない。


昨日も残業して帰ってきたが、電気は点いていた。


…が、今日は玄関にアキラの靴すら見当たらなかった。


——もう帰ったのかもね。


由里は、自分が少し残念な気持ちになっていることに気づく。


なんだかんだ、アキラに情が湧いていたことは否めない。