由里はとりあえず傷口に絆創膏を貼ってから料理を再開しようとした。


——あれ?傷口ないんだけど、なんで?


そう言えば、青年が傷口を舐めている間に、痛みが引いているような気がしていたのだ。


——もしかして、傷口舐めてもらって治ったとか…?いや、まさかね…。


疑問は持ったものの、一旦気にしないことにした。


料理の準備ができたので配膳をして、青年に声を掛ける。


「えっと、ご飯できたよ。一緒に食べない?えっと…ナニ君かな?」


「アキラです。」


「アキラ君ね!私、由里って言います。よろしく。」


にっこり笑って見せるが、アキラは無表情のままだ。


由里は気にせず、明るく振舞った。


「さて!おなかすいたから早く食べよ。冷めちゃう前に!」


そう言うと、由里はソファの後ろにあるテーブルの方へ向きを変え、席についてからアキラを手招きした。