——よく寝てる。よっぽど疲れてたんだろうな。


由里は部屋着の上からエプロンをつけて、夕飯の準備をし始めた。


今夜のメニューは、豚汁とサバの塩焼きだ。


——サバ、安売りしてたから2切れ分買っちゃったけど、正解だったな。


2人分の食事を用意するのなんて、いつぶりだろう。


仕事が楽しくて、いつも彼氏のことを後回しにしていた由里の恋愛は、毎回長続きせず、終わっていた。
恋愛を意識せず仕事に打ち込んでいたら、あっという間に数年経っていた。


——どの彼氏からも「由里って一人で生きて行けそうだよな」って言われてたなあ。


家事全般、生きていく上で支障がない程度に出来はする。が、得意ではない。
ただ、無難に家事をこなし、その上仕事をバリバリやっていたら「パートナーがいなくても生きていけるタイプ」に見られるようになってしまった。


——私だって、そばにいて励まし合えるような相手が欲しいのに。