「あの、大丈夫ですか?このマンションの方ですか?」


由里が声をかけると、その男性は顔を上げた。


——若っ!高校生くらいかな?


透き通るようにきれいな肌と、ヒゲが濃くないあたりから、由里はそう判断した。なかなかキレイな顔立ちをしている。
…が、明らかに顔色が悪い。血の気が引いて青ざめているように見える。


「キミ、どこの子?親御さんは?」


由里がそう尋ねると、相手はふるふると頭を振って膝に顔を埋めてしまった。


——家の鍵を忘れてマンションの中に入れないのかな?


考えを巡らせていると、目の前の青年は立て続けにハデなくしゃみをした。そしてまた顔を埋める。