思い返せば、アキラと出会ったことは運命的だったと言えるかもしれない。


仕事が休みの日に、近くのスーパーまで行った帰り道。
由里は、傘に当たるパラパラという雨の音を楽しみながら歩いていた。


夕飯の材料を少し買い足し、ついでに大好物のプリンを買った由里は、ほくほくしながらマンションに辿り着いた。


——ん?誰かいる。


家を出た1時間前にはなかった人影が、マンションの入口の隅に見えた。
誰かが植込みのそばにしゃがみ込んでいる。


脚を広げ、しゃがみこんでいるその人は、地面に顔を向けて俯いている。更にジャケットのパーカー部分と黒髪が被さっていて顔は見えない。
骨ばった手を見る限り、おそらく男性だ。雨で少し濡れていている。