「由里さん、俺…」


「ん?なに?」いつもと違う雰囲気を感じ取った由里は、ドキドキしながらアキラを見る。


しばらく二人は見つめ合っていたが、アキラの方が先に目を逸した。


「いや、やっぱりいいや。おやすみなさい。」


アキラはそう言って立ち上がると、廊下へ向かい、自分の部屋に入っていった。


——び、びっくりしたぁ。


由里はまだドキドキしながらも、安心して「ふぅ」と息を吐く。


——キス、するのかと思った。


8つ下で、童顔で、時々無邪気な部分を見せてくれるアキラを、弟のように思っていた。


…が、たまにあんな男っぽい雰囲気を出されると調子が狂うから困る。
特にここ数日、そういう雰囲気を出してくるようになり、アキラのことを男だと意識せざるを得ない。


由里は布団に入ってからも、アキラの色っぽい顔が頭から離れず、ドキドキが止まらなかった。