夜10時。


高梨由里は、金曜日の東京のネオン街を、電車の中から眺めていた。


まだまだ混み合っている車内の座席が空いているはずもなく、いつもどおりドア付近に立って最寄り駅に着くのを待つ。


165センチと高身長な由里は、今日もパンツスーツにヒールを合わせ、バッチリ決めていた。更に髪型はショートボブにしているため、見た目通りのバリキャリウーマンだ。


程なくして、電車が最寄り駅に到着した。


ぞろぞろと階段を降りる集団の中に由里も紛れ込む。


由里が住んでいるマンションは、駅から徒歩10分のところにある。


カツカツと、いつもより早いリズムでヒールの音を響かせながら、由里はマンションに辿り着いた。


エレベーターに乗り込むと、8と書かれたボタンを押して閉まるボタンを押した。


ウィーンという音と共に上の階へエレベーターが動き出す。それと同時に、由里はエレベーターの壁に寄りかかった。


——今日も疲れたなぁ。


本当は、もっと早く帰れるはずだった。


…が、退社直前になって、新人ちゃんのミスが発覚。


「ゆ、由里さぁん。助けてください…。」


毎日彼女が頑張っているのを知っていることもあり、見捨てるわけにはいかなかった。


結局、手分けして作業しているうちに、こんな時間になってしまった。