甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)

「うん。どこかに電話して“唯月くんをやっつけた”て報告もしてたよ」

「へぇ⋯⋯」


しばらく考えた後。唯月くんは「はぁーあ」と、なぜかショックを受けていた。


「俺にトドメを刺さなかったってことか。それに。見逃すばかりか、助けようとするなんてね」

「唯月くん?どうしたの?」

「⋯⋯ううん。よほど、君のことを悲しませたくなかったんだなって思ってね」

「私が悲しむ?」


コテンと頭を倒すと、唯月くんは呆れたように笑った。私の手に巻かれた、青いハンカチを見つめながら。


「俺が死んだら、雫は悲しむでしょ?」

「うん」

「神代は、雫の悲しむ顔を見たくなかったんだよ」

「え⋯⋯。なんで?」

「⋯⋯」


なんでって――と言葉に詰まった後。

唯月くんはフフと笑った。おかしくて仕方ないように、肩を震わせながら。