「自分が言ったんでしょ。“お礼がしたい”って。俺、ずっと待ってるんだけど?」

「⋯⋯あ!」


そういうことか!

この状況で、まさかさっきの話の続きをしてるなんて――律儀にお礼を言われるのを待つ唯月くんに、思わずクスッと笑ってしまった。

お辞儀をするために、唯月くんから体を離そうともがく。だけど、唯月くんに再びギュッと抱きしめられてしまった。


「唯月くん?」

「いい⋯⋯。このままで、いいから」

「そ、そう?」


なら――と、抱きしめあったまま。やっと私は、唯月くんにお礼を言った。


「さっき私を助けてくれてありがとう。そして⋯⋯私を人間にしてくれて、本当にありがとう。

唯月くんがいなかったら、今も楽しくない人生を歩んでいたと思う。

私はね、今がとっても幸せなの」