「ありがとう」って言ってなかった。

言いたかった。どうしても伝えたかった。

私に「毎日を生きる幸せ」をくれた唯月くんに、恩を返したかった。

ご飯係になるだけじゃ足りないって、そう思うくらい――

私は人間になれて、嬉しかったんだ。



「雫!!」



その時。

大きく響いた、私の名前を呼ぶ声。

それは目にも止まらぬ速さで私の前に現われ――


無防備に、鉛玉の前に立ちはだかった。