こうして改めてみてみると、やはり妖精と言うのは可愛い存在なのだなと思う。

 金髪に近い薄い緑色の髪は、あごより短いおかっぱで、眉毛もはっきり見えるおんざ前髪。

 一本一本が細く、手であおぐだけでもさらさらと靡いてしまいそうなほどの綺麗な髪の毛。

 体つきは完全に人間だけれど、着ぐるみ感のある細かい産毛がとても気持ちいい。

 トマトのへたのような襟のテルテル坊主のような透明な服。

「ねぇ」

 見つめていると、妖精の方から声を掛けてきた。

「約束だよ、名前を頂戴。僕の名前!」

 まだ少しだけ頭をこすりながら涙目の妖精は少しだけムスッとしている。

「そうだったね……どうしようかなぁ……」

「ええっ!? 名前つけてくれるって言ったのに!」

「違う違う、どんな名前にしようかなって。今考えるから待ってね」

 とはいえやはりぱっと思いつくものでもない。困った。

 ポチとかミケとかペットでもないし、センスのいい名前なんて薫に思いつくわけもなかった。

「ルー」

「るー?」

「ルーだよ、あなたの名前はルー。今日からルーだよ」

 ルーは、頭を押さえていた両手を大きく拡げて満面の笑みを見せた。

 カレーのルーを見かけて名前を付けたことを少しだけ後悔した。

「るー! 僕の名前はるー! ありがとう薫ちゃん!」

 その瞬間、少しだけルーの身体が光ったような気がした。




「四月一日さん! 四月一日さん! 人目でもいいので出てきてもらえませんか!?」

「婚約者に着いてどう思いますか?」

 精いっぱいの大声で女子寮に向かってマスコミが叫んでいる。

「ねぇルー。あのマスコミの人たち、なかなかにうるさいんだけど、どうにかならないのかな?」

「どうしてるーに聞くの?」

 意外にもきょとんとした顔でそんなことを言うルーに少しだけむっとする薫。

「あなた妖精でしょ? 何かできるんじゃないの?」

 その薫の言葉を聞いてルーは自慢げに胸を張る。

「ぼく何もできないもん」

 目を閉じて大きくため息をつく薫。

 そうですか……。

「朝はびっくりしたけど、こんな大声で叫ばれたんじゃ邪魔くさくてしょうがないよ。

 人気の芸能人っていうのは毎日こんな状態なのかしらね? 何日続くのかしら、頭がおかしくなりそう」

 うんざりとした気持ちを落ち着かせるように薫はルーの頬をつんと触ってみた。

「ほら、『人の噂も七十五日』って言うんでしょ? 75日待てばいいんだよ」

 のんきなものだ。それに妖精って言うのは日本のことわざをよく知っているんだね。

 改めて布団に横になろうとした時。