「晴士、もう焼き鳥屋着いてる?」

『いま来たとこ。状況はおっちゃんに聞いてるから大丈夫だよー』

「悪いな、もう少ししたら戻るから」

『ほーい! じゃあ後で』


電話を切ると、自販機でブラックコーヒーとカフェオレを買う。冷たい外気に晒され続けていたせいか、缶コーヒーの暖かさがじんわりと痛かった。


10代半ばの女の子を一人で公園に残しているので、モタモタしている暇はない。


「何やってんだか」


公園への道を引き返しながら、頭に浮かんだ言葉を呟いてみる。吐き出した分だけ深く息を吸うと、微かに残っていた酔いまで醒めていく。



店の外へ出たのは、晴士に電話するためだった。すぐに戻るつもりだった。アイツが店先で泣いていなければ、今頃は旨い飯とビールと、他愛もない会話を楽しんでいたはずだった。


今後は毎日のように、こんなガキ共の相手をするんだ。……想像しただけで気が滅入る。


先程より大きくため息を吐いたところで、状況は変わらない。空気の冷たさも変わらないから、歩く速度も変えられない。


見限るタイミングは何度もあった。


でも、そうしなかったのは自分だ。



公園へ戻り、2本目のカフェオレを渡し、頃合いになったら焼き鳥屋への道をまた戻る。

大人しくついて来ているかと振り返ると、例の女の子は、店先で会った時よりもスッキリとした表情をしていた。


他人に怒りをぶつけた後なのだから、当然といえば当然。でもまあ、キレられ損にならなくて良かった、と思うことにする。