「小さい頃、紗良と家族ぐるみでキャンプに行ったの。そこで、立ち入り禁止の森に入って迷子になってわんわん泣いてたら、1番最初に紗良が見つけてくれた」



忘れもしない。


私を見つけて安堵した表情で、肩で大きく息をしながら立っていた紗良。

スポットライトでも当てられたかのように、紗良が立っている場所だけ確かに光が差し込んでいた。

あの時、紗良が神様みたいに見えた。大袈裟で単純な幼い頃の思考回路だ。

でも、その出来事は今も根深く紗良と私の思い出の中心にいる。



「木や葉に覆われていたとしても、僅かな隙間を見つけて光を与えてくれる。紗良はそういう人」



本当の私が内側に篭ってしまっても、無理して笑ったりしていても、紗良は僅かな隙間を見つけて寄り添うような光をくれる。

木漏れ日みたいに、影の世界に無数の小さな光を落としてくれる。